小次郎独演会

こんにちは、小次郎です。凡夫の独り言です。

わたしを離さないで

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残り100頁を昨夜読了。
30分間、ルースとトミーの気持ちを考える。
ヘールシャムでの楽しい日々が極彩色で蘇る。彼らは、クローン人間か。
臓器提供のみが目的で生かされている人間の形をした生物か。
何故逃げない。
逃亡も戦いではないのか。

牛、豚、鳥、魚、野菜、全て人間の胃袋に提供される命。
彼らは逃げやしない。順番がくるまで、成長し、肥え太る。

俺たち、ホモサピエンス サピエンスがこの惑星の王様として君臨し
ヒトゲノムを解読し、新たなチャレンジに向かう今
カズオ・イシグロは、強烈なメッセージを発信した。

信仰という魔術はいっさい使わず、キャシー・Hのやわらかな語り部
日常生活の活写の中で、「提供」と「使命」を描ききっている。

マダムが目に涙をためて、小声で、
「かわいそうな子たち。あんな目論見だの計画だので、結局、わたくしたちは
 何ということをしたのかしら・・・・・」

俺たちは、しかし「発展。進化。」という方向に向かわざるを得ないのか。
生きていくとは、弱者を殺していく、と同義語なのか。

この夏、おすすめの1冊です。